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Liquid AI、出力トークンゼロの意思決定モデル「d1」を公開——分類・ルーティング・モデレーションを単一APIコールで処理
2026/09/30
テキストを書かないAI——Liquid AIが「d1」をリリース
Liquid AIは、テキスト生成ではなく構造化された意思決定に特化したモデル「d1」を公開した。通常のLLMとは異なり、d1はユーザーが定義した選択肢の中から答えを選び、キャリブレーションされた確率値を返す。APIレスポンス中の usage.output_tokens は常に0であり、文字通り「トークンを出力しない」モデルだ。
現時点ではホスト型APIとして提供されており、モデル名は d1:free。GGUF・MLX・ONNXといったセルフホスト向けの重みは公開されておらず、ファインチューニングも非対応と報告されている。
3つのプリミティブ:Noul・Choice・Score
Liquid AIのドキュメントによれば、d1は3種類の質問タイプを持つ。
Noul(ノウル) はYes/Noを確率値(0〜1)で返す形式だ。「このメッセージはクレームか?」という質問に対して0.999を返すとLiquidのサンプルは示している。
Choice(チョイス) はあらかじめ定義した選択肢の中から最適なものを1つ選び、全選択肢の確率分布と信頼スコアをまとめて返す。二重請求に関するチケットが「billing」カテゴリに0.9997の確率でルーティングされる例が公式ドキュメントに示されている。
Score(スコア) は順序付きルーブリックに基づいて入力を評価し、確率加重された位置を返す。レベルは0始まりでインデックス化されており、4段階の緊急度ルーブリックでは0〜3の範囲となる。本番障害のサンプルでは2.9995というスコアが返ったとされている。
これら3つは1リクエストに混在させることができ、同一の状態(コンテキスト)に対してまとめて評価される。
APIの呼び出し方
リクエストはモデル名・状態(プレーンテキストまたはJSONオブジェクト)・質問リストの3要素で構成される。エンドポイントは POST https://api.liquid.ai/decisions/v1/systemone で、APIキーは console.liquid.ai から取得する。クライアントライブラリはPython向けの typesafe-sdk とTypeScript向けの @typesafe-ai/sdk が用意されている。
Pythonでの基本的な呼び出しは以下のようになる。
from typesafe_sdk import TypeSafeClient, Noul
client = TypeSafeClient(api_key=os.environ["LIQUID_API_KEY"],
base_url="https://api.liquid.ai")
result = client.system_one(
model="d1:free",
state="I have been waiting over three weeks for my order...",
questions={"is_complaint": Noul(
instructions="Is this message a complaint from the customer?")},
)
print(result.answers["is_complaint"].noul) # 0.999
LLMの分類処理をd1に移行する理由
Liquid AIのマイグレーションガイドは、一般的なLLM+構造化出力との比較を具体的に列挙している。
- 出力トークンの課金なし: LLMは1単語のラベルを返す場合でも出力トークンが発生する
- 予測可能なレイテンシ: 出力長に応じて伸びるデコーディングループが存在しない
- スキーマエラーなし: 回答は常に質問タイプに一致するため、不正なJSONやリトライが不要になる
- 利用可能な不確実性: 自己申告の数値ではなく、キャリブレーションされた確率値が得られる
- ラウンドトリップの削減: 3つの逐次的な分類呼び出しが1回にまとめられる
モデレーションのユースケースでは「0.8以上はブロック、0.2以下は許可、中間は人間レビューへ」というように確率値を閾値として活用できると説明されている。ルーティングの例では、ルーターの信頼スコアが0.5を下回った場合に上位モデルへフォールバックする設計が紹介されている。また、同一入力を繰り返し評価した際の一貫性が高く、判定のぶれ(verdict flip)が少ないともLiquidは述べている。
なお、要約・ドラフト生成・マルチターン対話・コード生成・複雑な多段階推論にはLLMの利用が引き続き推奨されている。
デモ:Road Decider
Liquid AIはデモアプリとして「road-decider」をGitHubのクックブックリポジトリに公開している。ピクセルアート風のサバイバルレーサーで、d1がChoiceタイプの質問を使って左・中央・右の走行レーンをゲームのティックごとに選択する。ゲーム速度によって毎秒2〜5回程度の判断が行われるという。このデモで特に有益とされた知見は状態設計に関するもので、生のグリッドデータよりも「各レーンの最初の障害物までの距離を要約した形式」のほうが信頼度の高い判断が得られたと報告されている。
用途の棲み分け
Liquid AIのガイドは使い分けをシンプルに定義している。「答えがN個の既知の選択肢のうちの1つであれば決定モデルを使う、モデルが新しい文字列を生成する必要があるならLLMを使い続ける」という原則だ。チケットルーティング・コンテンツモデレーション・リランキング・LLM-as-judgeチェックといった構造化された判断タスクを大量に処理しているチームにとって、コストと予測可能性の両面で選択肢となり得るモデルと言えそうだ。