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ウェブ検索を「無料」にしたTinyFish――AIエージェントが本当に払うコストとは
2026/10/19
AIエージェントが払う「2種類のコスト」
AIエージェントがウェブを読むとき、実際には2種類のコストが発生すると、ウェブインフラ企業のTinyFishは説明している。1つ目は検索・フェッチAPIの利用料金(リクエストごとの課金)、2つ目は取得したページの内容をモデルに渡す際に発生するトークン処理コストだ。推論や生成の分が加わると、後者が想定外の規模に膨らむことも多いという。TinyFishは、チームがモデル料金だけを意識して取得コンテンツの影響を過小評価しがちだと指摘する。
TinyFishのアプローチ:検索・フェッチを無料に
TinyFishは検索APIとフェッチAPIを、公表レート上限(検索:毎分30リクエスト/毎時500件、フェッチ:毎分150URL/1日1,000件)の範囲内で無料提供する。ウォレット残高が0円でも利用可能で、新規アカウントには8ドル分のウォレット残高が付与されると同社のプライシングページに記載されている。有料サービスはエージェント機能(1ステップ0.016ドル、同時2実行)とブラウザ機能(1分0.002ドル、5セッション)のみとなっている。
同社がこの無料モデルを成立させられる理由として、ブラウザフリート・ステルスシステム・セッション管理・エラスティックスケーリングといったインフラを検索製品より前に構築済みであること、ウェブ専用AIモデルが汎用モデルへの依存を抑えること、そして自社では検索インデックスを持たない方針であることの3点を挙げている。
ページサイズとトークン消費の関係
TinyFishは2026年6月2日に45のURLを対象にフェッチ品質評価を実施した(同社内部テスト)。同一のDailyMailの記事(本文約4,300文字)を5つのプロバイダーのデフォルト設定で取得したところ、返却された文字数には大きなばらつきが生じたと報告されている。
| プロバイダー | 返却文字数 | 推定トークン数 | 入力コスト(100万トークン=1ドル換算) |
|---|---|---|---|
| TinyFish Fetch | 4,737 | 約1,184 | 約0.00118ドル |
| Exa Contents | 65,793 | 約16,448 | 約0.01645ドル |
| Firecrawl Scrape | 171,095 | 約42,774 | 約0.04277ドル |
| Tavily Extract | 46,433 | 約11,608 | 約0.01161ドル |
| Parallel Extract | 600(抜粋のみ) | 約150 | 約0.00015ドル |
トークン数はMarkTechPostによる試算(1トークン≒4文字、入力単価1ドル/100万トークン)。実際のトークン数はトークナイザーによって異なる。なお、Parallelは記事全文ではなく抜粋のみを返したため、他の結果と単純比較はできない点に注意が必要だ。
この試算では、FirecrawlはTinyFishの約36倍の文字数を返している。ただし、これは1つのウェブページに基づく例示であり、すべてのサイトに一般化できるものではないと記事は注記している。
コンテキストウィンドウへの影響
取得したコンテンツをフィルタリングや要約なしにそのままコンテキストに流し込む場合、約42,774トークン(Firecrawlの例)は128Kトークンのコンテキストウィンドウの約3分の1を占める計算になる。このようなページを3つ読めばウィンドウがほぼ埋まり、システム指示や会話履歴、エージェントの返答を入れる余裕がなくなる。
また、エージェントのループ処理では毎ターンで会話全体が再送信されるため、ノイズの多いページの再読コストはキャッシュ価格で請求され続ける。コストは下がるとしても、ウィンドウの占有は解消されない、とArtificial Analysisの手法ドキュメントは指摘しているとこの記事は伝えている。
同社の内部評価では、カバレッジ(1,000文字以上かつシグナル比率30%以上を有効と判定)はTinyFish 93%、Tavily 80%、Exa 73%、Firecrawl 62%、Parallel 58%という結果が報告されている。ただし自社テストであり、サンプル数は45 URLで、ニュースページが差異に大きく影響しているという点は留意が必要だ。
Artificial Analysis ベンチマーク上の位置づけ
Artificial Analysisの2026年9月28日時点のスナップショットでは、TinyFish Search(web)はサーチインデックススコア71、1,000タスクあたりのコスト9.30ドル(検索料金0ドル+モデル処理9.30ドル)、タスクあたり所要時間59.0秒という結果が示されている。表示されている12構成の中ではスコア最下位ながら、総コストは最低水準だという。
最高スコアはPerplexity Search(medium)の80、最低ラインとなるノーサーチベースラインは33と報告されている。モデル処理コストは表示12構成で1,000タスクあたり8.04〜21.65ドルの幅がある。
ただし、このベンチマークはArtificial Analysisが独自の抽出レイヤーを使用しているため、TinyFish Fetchの実際の性能を直接測定したものではない点、および1タスクに複数回の検索が含まれうるため「1,000タスクあたりのコスト」を「1,000リクエストあたりのAPIコスト」と混同しないよう注意が必要だと記事は指摘している。
競合との比較
Artificial Analysisのリーダーボードとフェッチテストの両方に登場する3社との比較を見ると、TinyFishのゼロ検索コストは際立っている。一方でExa(auto)は74点、Firecrawl 73点、Parallel(advanced)は75点と、ベンチマークスコアではいずれもTinyFishをやや上回る。タスクあたりの所要時間はFirecrawlの62.0秒に次ぐ59.0秒と、12構成の中では2番目に長い部類に入る。
検索・フェッチを「DNSやストレージと同じくインフラの一部」と位置づけることで、エージェントが成果(予約完了、フォーム入力など)に集中できるようにする――これがTinyFishの設計思想だと記事は伝えている。ビルトインモデルを他モデルに差し替えられない点はトレードオフとして挙げられており、利用目的によって向き不向きが分かれそうだ。
出典: TinyFish Makes Search Free: What It Really Costs an AI Agent to Read the Web