TIP
← Research

Research

Microsoftが逆合成予測モデル「RetroChimera」をNature誌に発表——PhD化学者の盲検テストでも既存モデルを上回る評価

2026/09/23

Microsoftの逆合成AIモデル「RetroChimera」がNature誌に掲載

Microsoft Researchは、小分子の化学合成経路を自動予測する逆合成モデル「RetroChimera」を開発し、その成果が学術誌『Nature』に掲載されたと報告している。モデルの実装および学習済み重みはオープンソースとして公開されており、研究者が新たな医薬品関連分子や先端材料の開発を加速できることを目指しているとされる。

化学合成の「計画」が依然として大きな壁

新薬や新素材の開発には、目的の分子を実験室でゼロから合成する工程が欠かせない。しかしその合成経路の設計作業は現在も大部分が手作業であり、時間とコストを大きく消費すると説明されている。計算化学の進歩により探索できる分子の種類は飛躍的に増えた一方で、実際に合成可能な経路を見つけることは依然として重大な課題として残っている、とMicrosoftは指摘する。また、化学合成は医薬品開発コストの主要な押し上げ要因でもあるという。

RetroChimeraのアーキテクチャ:2つのモデルを融合

RetroChimeraは、それぞれ異なる強みを持つ2つの逆合成モデルを組み合わせ、両者の候補経路をランク付けする仕組みを採用している。これにより、単体モデルよりも高品質な合成経路の予測が可能になると報告されている。

Nature論文では、モデルのアーキテクチャに加え、以下の検証結果が詳述されているとされる。

  • 希少な反応タイプの再現能力:一般的なモデルが苦手とする稀な反応タイプについても高い再現性を示したとされる。
  • ゼロショット転移とファインチューニング:独自データセット(プロプライエタリデータセット)に対してゼロショットでの転移学習と追加ファインチューニングの両方で有効性が確認されたと報告されている。

盲検テストでPhD化学者が既存モデル・文献反応を上回ると評価

特筆すべき検証として、博士号を持つ化学者を対象とした盲検テスト(ブラインドテスト)が実施されたとされる。その結果、RetroChimeraが提案した個々の反応予測は、従来モデルの提案や文献に記録された既知反応と比較して、化学者からより高い評価を受けたと報告されている。

オープンソース公開で研究コミュニティへの貢献を目指す

Microsoftは、RetroChimeraの実装コードおよびモデルの重みをオープンソースとして公開した。これにより、学術機関や企業の研究者が独自のデータセットに対してモデルを適用・カスタマイズしやすくなることが期待されている。

逆合成予測(Retrosynthesis)は、目標とする分子から遡って「どの出発物質をどう組み合わせれば合成できるか」を自動的に探索するAI技術であり、創薬の初期段階における大規模分子探索の効率化に直結する領域として注目を集めている。RetroChimeraの登場は、医薬品・材料・農業分野における分子設計の加速に寄与する可能性があると、Microsoftは述べている。


参照元: Microsoft Research Blog「Improving synthesis prediction of small molecules at scale with RetroChimera」/ Nature(論文掲載)


出典: Improving synthesis prediction of small molecules at scale with RetroChimera