WordPressでブログを運営する時に最も重要となるのはサーバーの選定です。
一度構築してしまうと、移転するのに大変です。動作環境が同じではない可能性が高いですし、すんなり動作しないことも多いのです。はじめは安いサーバーから始めて軌道に乗ったら、もっとお金を出してより高速なサーバーへ移行すれば良いと考えるかもしれません。しかし、このコストの差はわずかですので、ぜひ良いサーバーを選んでください。
なぜサーバーが重要なのか?
ではまずなぜサーバーが重要なのか説明したいと思います。
一番の要因はGoogleが、ページの表示スピードを検索結果に反映させるようになったからです。これはページが検索されるスピードが離脱率やアクセスに大きな相関関係にある事が分かっているからです。
つまりコンテンツが良くても、ページが表示される前にユーザーは離脱してしまうのです。
Googleはページの表示スピードやUI(ユーザーインターフェース)に関するツールを公表しています。サイトが表示される時間やムダなコードが利用されていないか、モバイル版はボタンの位置や文字の大きさなどが自動的に処理されてスコアが出ます。
WordPressはPHPというプログラム言語で動いていますが、それほど高速に処理される言語ではありません。それでもウェブサイト用に開発された言語であるために、利用者も多いのです。
比較的簡単に開発もできるので、Wordpressには多くのプラグインやテーマがあります。そのため現在ではWordpress以外でウェブサイトを運営するのは考えられなくなりました。
プラグインを使えば使うほど多機能になりますが、動作は遅くなる事が多いです。そのためにPHPを高速で動かせる仕組みやキャッシュという事前に動作させた内容を一時保存させて、アクセスした時には保存した内容を表示させるといったテクニックが多用されています。
違いが出る高速化の機能
今回はサーバーの物理的なマシンのスピードだけではなく、ワードプレスを高速に動作させる技術の比較、その効率性などに特化して比較してみました。
実際使ってみなければ分からない点なども含めて総合的に評価しました。
WordPressが高速に動作させる機能はとても複雑で数種類の機能が複合的に組み合わさっています。この最適化やWordpressに特化した高速化をしていれば、同じマシンスピードでもより速くなります。
逆に高速化処理の影響で正常に表示出来なくなってしまうこともあります。これではいくら速くても意味が無いですよね。数年前よりもこの辺の技術が安定化してきましたが、サーバーの企業によって随分違いが出てきました。
高速なサーバーのチェックポイント
どこの会社も自分たちのサービスが素晴らしいと言いますから、一概に比較できません。新しいサービスもドンドン入れ替わり、数年前の状況とは大きく異なっています。
今回はスピードに関するところだけに着目したチェックポイントを紹介します
- ディスクがSSDを使っている
- キャッシュ機能がある
- より高速なウェブサーバーを採用している
これらの機能を持っていないとかなり遅く感じるとおもいますので、確実にチェックして下さい。
ディスクがSSDを使っている
データーはディスク上にありますが、これを読み込む時間が最もネックとなります。このスピードが遅ければ、マシンが速くても高速化機能があっても遅くなります。SSDとHDDと選べるなら、絶対SSDを選んで下さい。SSDの方が保存容量が少ないと思います。多くのお客さんでウェブサーバーを利用するだけでしたら、この保存容量で問題になることはありませんでした。フリー素材提供サイトなどを運用する場合や動画を多用する方は少し検討が必要です。
SSDよりさらに高速なNVMeというSSDを使っているサービスも増えてきました。NVMeの方がより速くおすすめです。
これはマザーボードのPCIeに直接接続できるメモリーで、ディスクドライブ用のインターフェースを介さないSSDです。
一般のSSDはSATAというインターフェースを通じて接続していますが、このSATAのスピードがボトルネックとなりSSDのチップの最大スピードの能力を発揮できないようになりました。そこでSATAを飛ばして直接マザーボード上のPCIeというCPUに近い部分に接続することで転送スピードを速くした仕組みです。
現状SSDよりNVMeの方が高いのですが、今後こちらの方が主流になってくるはずですので、NVMeを採用しているサーバーであれば、なお良いでしょう。
キャッシュ機能がある
キャッシュの技術は様々で、それぞれ特徴があります。しかしレンタルサーバーはより汎用性が求められますので、今まではあまり大差ないと思ってきました。逆にキャッシュをオンにすると不都合が起きることもあったので、慎重に使っていました。
しかし2022年になり、大きく変わってきました。これが、WEXALです。後半に説明します。
より高速なウェブサーバーを採用している
どの企業もより効率的に動作するようにしています。同じコストで高速に動作すれば良いサービスを提供出来るからです。
たとえば、Webサーバーと言えば長年Apacheが使われてきましたが、コードの肥大化などで処理能力が落ちてきました。一度に大量のアクセスがあると動作できなくなることもあり、負荷耐性問題があるとされています。
そこで注目を浴びたのが代替のウェブサーバーです。現在最も人気のあるのがnginxというロシアで開発されたソフトウェアです。またさらに新しく脚光を浴びているのがLiteSpeedです。
ワードプレスはPHPという言語で処理されていますが、これを高速化する技術も重要です。PHPはアクセスされてからプログラムを読み込みコンピューターが理解出来るようにしてから処理します。しかし、プログラムの内容は毎回変わるわけでは無いので、コンピューターが処理出来るコードに変換するところまでを事前に行っておくとより速くなります。
おすすめのサーバーをレビュー
このような観点を重視しておすすめのサーバーを紹介しようと思います。仕事を通じて様々なサーバーを利用していますので、実際契約された任意のサーバーの印象をお伝えすることが出来ます。
エックスサーバー
エックスサーバーはWordpressに対するサーバーとして評価の高いサービスを長年行っています。Xサーバーに関する情報もたくさんありますし、現在では最も評価が高いサービスではないかと思います。
とりあえずここにしておけば、大きな問題はありません。個人向けでも企業向けでもまずこちらをおすすめにしています。
最も大きなおすすめポイントは新しいサーバーへのアップグレードを無料で行ってくれたことです。
サーバーは契約した時のまま使い続けますが、当然古くなってきます。5年前に契約したサーバーでも同じ費用を払いますが、同じ費用を払う同等のプランでも今契約したサーバーの方が速いでしょう。これはパソコンやスマホでも感じると思います。それと同じように、5年10年も運営していれば、何世代も古い環境に構築されている訳です。
通常は新しいサーバーを契約してサーバーを移転しなければなりません。そうすると一時的にですが2つのサーバーを契約する必要がありますし、サーバーを移転するための労力が必要です。技術的な知識も必要です。
しかしエックスサーバーは、新型のサーバーへ無料でグレードアップするサービスを始めましたし、その移行も簡単に行えるようになっていました。このようなことを行ってくれたのはとてもありがたいと思いました。
最も安いプランでも高速化機能やSSDの採用など通常の運用において全く不足を感じません。
価格は契約期間によって変わります。36ヶ月が最も月あたりの金額が安いのです。ただし、月額払いではなく、先払いとなります。
Conoha Wing
以前は独自のキャラクターを全面に使って売り出していたサーバーです。GMOグループのサービスで、エックスサーバーがちょっと高い言われる方に、おすすめしています。
サービス開始時からSSDを取り入れ、価格のわりに高速なサービスを提供していました。ウェブサーバーを運用する上で必要な機能は全て含まれています。非常に良いと思います。
サイトは技術的な説明も多く、スペックなどもまとめられています。コントロールパネルの構成がスッキリしていて管理しやすいと思います。
お名前.com
ドメイン管理会社の老舗として有名ですが、現在ではサーバーも運用しています。
Conohaと同様GMOグループ企業で高速化機能などほぼ同等な印象があります。
前述の通りノーマークだったのですが、お客さんのサーバーを使った際に、明らかに他より高速だと思いました。
価格も他社と遜色なくなり、実は現在最もおすすめしているサーバーです。
高速化技術の違い
Xserverはkusanagiという高速化の技術を使い、Conoha Wing/お名前.comはWEXALという高速化技術を使っています。どちらが優れいているのでしょうか?
実はどちらもプライムテクノロジーという企業の製品です。
kusanagiはnginx(エンジン・エックス)というロシアで開発された新しいウェブサーバーをCentOSなどのLinuxでWordpressの為にチューンナップしたサーバー環境です。
WordPressに最適化された設定のため、同等のマシンより大変高速で動作します。オープンソースとしてもリリースされていますが、この商用版(Premium Edition)を利用しているのがXserverです。Kusanagiのサーバー環境にさらに通信の高速化とレンダリングの高速化を行うことでより高速に表示されるようになっています。
これによりGoogle PageSpeedのスコアが向上するとされています。
XEXALはこの商用版に使われている通信とレンダリングの高速化の部分だそうです。しかし、Conoha Wing/お名前.comもウェブサーバーはnginxを利用しています。
Xserverには、キャッシュを行う高速化機能はありますが、Conoha Wing/お名前.comにははキャッシュを行う高速化の他に、高速化(AI)という機能があります。
高速化(AI)はどの程度有用か
実際体感スピードは全く変わらないと言っても良いでしょう。
但し、画像やスクリプトの圧縮など内部で行われている機能は、Wordpressでプラグインを入れて実現している内容とほぼ同じだと思われます。
CSS/JSなどのスクリプトはウェブサイトのデザインや動作などを司るコードですが、だんだん肥大化しています。これを圧縮したり使わない部分を削ったりすることで、量を減らすことが出来ます。通常Wordpressではプラグインを入れて、圧縮を行いますが、サーバー側で行ってくれる機能です。
また画像はJPGEやPNGと言った画像フォーマットを使うことが多いのですが、Googleは次世代の圧縮技術でGoogleが開発したWebPを使うことを奨励しています。これに変換してくれるのです。これもWordpressではプラグインを使って実現していました。
どちらもブラウザーの環境やテーマのコードなどにより正しく動作しないことがあるので、個別にオン・オフを行う必要があるのですが、XEXALのConoha Wing/お名前.comの方が簡単に設定できます。
この機能のお陰でPageSpeedのスコアが上がります。
もちろんXserverでもプラグインを使うことで同等の機能を利用可能ですが、プラグインを使うことで遅くなることも考えられます。逆にプラグインの方がさらに詳細に設定できますので、根気と知識があれば、こちらの方がより良い設定が出来る可能性があります。
Conoha WingはKusanagiを使っていないのか?
KusanagiはPHPなどのチューンアップをしていて良さそうですが、あえて書いていないと言うことは、そのチューンアップをしていないのかと感じるかも知れません。もちろんそんなことはないでしょう。レンタルサーバーはより効率的な設定をしているのです。何が違うのかというとPHP実行環境をLiteSpeedにしているのです。
nginxはウェブサーバーですが、PHPを実行させるアプリケーションサーバーは別の仕組みで動いています。これがfpmやFastCGIなどが使われてきましたが、LiteSpeedにされたようです。
実際LiteSpeedの方が高速に動作します。ただ、fpmと大差ないと思います。
結論
確かにConohaやお名前.comのサーバー環境の方が現時点(2022年6月)では有利でしょう。
総合的に見て大きな違いはないと思います。2022年6月に同時期に契約したお客さんのサーバーで比較してみました。
ほぼ同様の構成で制作しましたが、
XserverはWAF(セキュリティー)をオンに出来ましたが、お名前.comではWAF(セキュリティー)をオンにすると管理画面の一部の動作が不調でオンに出来ませんでした。
高速化機能はどちらも問題ありません。お名前.comの方が細かく設定できると思います。
その他、ドメインやwordpressをインストールした直後の反映は、どちらも少し時間がかかりました。これはSSLの設定には時間がかかるためだと思います。
この3つのサービスはどれを選んでも特に問題ないと思います。